BOOKS ランキング&今週のおすすめの一冊 2024/10/15放送
2024.10.15
毎週火曜日9時20分頃から、RKCラジオの「とさこちラジオ」で放送しているBOOKSランキング!
10月15日に放送した内容をご紹介します★
10月15日に放送した内容をご紹介します★
『10月15日放送 BOOKSランキング!TOP10』
🔻ランキング🔻※10月9日付
1位 いのちの車窓から 2
星野源 著 <KADOKAWA>
2位 なぜ働いていると本が読めなくなるのか
三宅香帆 著 <集英社>
3位 生殖記 初登場!
朝井リョウ 著 <小学館>
4位 日曜市の歩き方マップ
文 石川藍・かずさまりや/ イラスト いそのけい
5位 さかさ星 初登場!
貴志祐介 著 <KADOKAWA>
6位 パンどろぼうとりんごかめん
柴田ケイコ 作 <KADOKAWA>
7位 ごっくん馬路村の男
依光隆明 著 <リーダーズノート出版>
8位 アンパンマン伝説 新装版 初登場!
やなせたかし 著 <フレーベル館>
9位 迷惑な終活
内館牧子 著 <講談社>
10位 中西和夫の写真絵本 土佐湾のカツオクジラ
中西和夫 写真・文/ 岩田高志 監修 <大空出版>
1位 いのちの車窓から 2
星野源 著 <KADOKAWA>
2位 なぜ働いていると本が読めなくなるのか
三宅香帆 著 <集英社>
3位 生殖記 初登場!
朝井リョウ 著 <小学館>
4位 日曜市の歩き方マップ
文 石川藍・かずさまりや/ イラスト いそのけい
5位 さかさ星 初登場!
貴志祐介 著 <KADOKAWA>
6位 パンどろぼうとりんごかめん
柴田ケイコ 作 <KADOKAWA>
7位 ごっくん馬路村の男
依光隆明 著 <リーダーズノート出版>
8位 アンパンマン伝説 新装版 初登場!
やなせたかし 著 <フレーベル館>
9位 迷惑な終活
内館牧子 著 <講談社>
10位 中西和夫の写真絵本 土佐湾のカツオクジラ
中西和夫 写真・文/ 岩田高志 監修 <大空出版>
『今週の初登場作品!』
今週のランキング初登場!
『生殖記』 朝井リョウ 著 <小学館>
とある家電メーカー総務部勤務の尚(しょう)成(せい)の日常が○○目線で語られる。
語り手の正体とは?「正欲」から3年半ぶりとなる最新長篇。
『さかさ星』 貴志祐介 著 <KADOKAWA>
戦国時代から続く旧家、福森家の屋敷で起きた一家惨殺事件。遺体はいずれも人間離れした手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていた。
数百年続く「呪い」の恐怖を描く特級長編ホラー。
『アンパンマン伝説 新装版』 やなせたかし 著 <フレーベル館>
アンパンマン誕生から国民的ヒーローに成長するまでを、やなせたかしが自らの人生を交えて語る詩&イラスト&写真&エッセイ集。絵本『あんぱんまん』誕生50周年を記念して、装い新たに復刊。
『生殖記』 朝井リョウ 著 <小学館>
とある家電メーカー総務部勤務の尚(しょう)成(せい)の日常が○○目線で語られる。
語り手の正体とは?「正欲」から3年半ぶりとなる最新長篇。
『さかさ星』 貴志祐介 著 <KADOKAWA>
戦国時代から続く旧家、福森家の屋敷で起きた一家惨殺事件。遺体はいずれも人間離れした手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていた。
数百年続く「呪い」の恐怖を描く特級長編ホラー。
『アンパンマン伝説 新装版』 やなせたかし 著 <フレーベル館>
アンパンマン誕生から国民的ヒーローに成長するまでを、やなせたかしが自らの人生を交えて語る詩&イラスト&写真&エッセイ集。絵本『あんぱんまん』誕生50周年を記念して、装い新たに復刊。
『今週のおすすめの一冊』
「声の在りか」
寺地はるな 著 <KADOKAWA>
今回紹介させて頂くのはKADOKAWAから文庫で刊行された小説「声の在りか」です。著者は寺地はるなさんで、私が紹介させて頂くのは「希望のゆくえ」「雨夜の星たち」に続いて三作目となります。すっかり私も、等身大の悩みや葛藤を抱えて生きている人物の描写が鋭い寺地はるなさんワールドの虜になってしまいました。
寺地さんの作品は読む人が少しだけ前向きになれるような読後感のものが多いです。今作でもやはり身の周りに当たり前に存在している生きづらさが物語を通して登場します。例えば周囲の人間に遠慮して自分の意見を言えなかった、他人を優先して自分の気持ちを飲み込んだ、といったことは誰しもが経験のあることだと思います。声に出して相手に届けなかった気持ちは初めから無かったものと同じ、少し厳しい言い方もしれませんが、「声の在りか」とはそういった側面があるように思います。
さて、今作の主人公である希和(きわ)は小学四年生の息子を持つ主婦です。食事中にスマホで動画を見る夫は希和の言うことに気のない返事ばかりで、精神的な親離れの始まった息子の考えていることも希和は分からなくなりつつあります。彼女はいつからか家族や周囲の人間に気を遣って、みんなに良く思われようと自分の声を飲み込み、当たり障りがなく本心ではない言葉を口にするようになっていました。そんな希和が民間の放課後児童クラブ『アフタースクール鐘』で働き始めることで少しずつ前向きに変わっていく物語です。
今の時代であまり女性的・男性的という言葉を使うのもナンセンスではありますが、しかし希和を取り巻く世界は女性社会特有のものを感じました。実の母親から夫を立てれば家庭円満なのだと諭されたり、PTAの委員会に参加しているママ友との関係といった描写は実際にお子さんがいるお母さん方には強く共感してしまう部分があるのではないでしょうか。反対に男性目線で読むと、世の中の女性とはこんなことを口にされたり経験しているのかと驚くことがあるかも知れません。
自分の感情を言葉にするのはとても難しいですし、それを他者に伝えることは恐ろしくもあり億劫でもあります。そうやって無くしてしまった声を私たちはいくつも抱えているのでしょう。その普遍性に寺地さんは鋭く切り込んでいます。自分の感情や意見を無くした後に口から出てくる言葉とは一体どんなものでしょうか。おそらくそれは『世間的に正しいこと』や『周りのみんながそう思っていること』なのです。人間は周囲に同調するために本心でないことを声にします。周囲と違うことを言う人は、面倒くさい人としてグループから外されてしまう恐怖があるものです。
『アフタースクール鐘』の発起人である要(かなめ)という男性も良い味を出してくれています。堅実な職にも就かず周囲の人からの評判は良くないと語られますが、彼が民間で放課後クラブを作った理由を知ってから、私はこの人物のことが好きになってしまいました。他人から聞く評判と、実際に関わることで分かった人物像がイコールではないのも面白い所です。『アフタースクール鐘』に通う子供たちや要と交流していく内に、希和が周りの声に流されず自分の意見や感情を声に出すように前向きに変わっていく、その様子が「声の在りか」というタイトルにぴったりはまっているように思います。
声に出した言葉というのは不思議なもので、何気なく誰かに言った言葉が巡り巡ってどこかの誰かを救う、なんてこともあるのかもしれません。面倒でも言葉を濁したり飲み込んだりせずに、自分の気持ちに向き合って言葉を重ねていくことの大切さが、寺地さんが「声の在りか」という作品に込めたメッセージなのだろうなと感じました。
金高堂書店本店 スタッフ
寺地はるな 著 <KADOKAWA>
今回紹介させて頂くのはKADOKAWAから文庫で刊行された小説「声の在りか」です。著者は寺地はるなさんで、私が紹介させて頂くのは「希望のゆくえ」「雨夜の星たち」に続いて三作目となります。すっかり私も、等身大の悩みや葛藤を抱えて生きている人物の描写が鋭い寺地はるなさんワールドの虜になってしまいました。
寺地さんの作品は読む人が少しだけ前向きになれるような読後感のものが多いです。今作でもやはり身の周りに当たり前に存在している生きづらさが物語を通して登場します。例えば周囲の人間に遠慮して自分の意見を言えなかった、他人を優先して自分の気持ちを飲み込んだ、といったことは誰しもが経験のあることだと思います。声に出して相手に届けなかった気持ちは初めから無かったものと同じ、少し厳しい言い方もしれませんが、「声の在りか」とはそういった側面があるように思います。
さて、今作の主人公である希和(きわ)は小学四年生の息子を持つ主婦です。食事中にスマホで動画を見る夫は希和の言うことに気のない返事ばかりで、精神的な親離れの始まった息子の考えていることも希和は分からなくなりつつあります。彼女はいつからか家族や周囲の人間に気を遣って、みんなに良く思われようと自分の声を飲み込み、当たり障りがなく本心ではない言葉を口にするようになっていました。そんな希和が民間の放課後児童クラブ『アフタースクール鐘』で働き始めることで少しずつ前向きに変わっていく物語です。
今の時代であまり女性的・男性的という言葉を使うのもナンセンスではありますが、しかし希和を取り巻く世界は女性社会特有のものを感じました。実の母親から夫を立てれば家庭円満なのだと諭されたり、PTAの委員会に参加しているママ友との関係といった描写は実際にお子さんがいるお母さん方には強く共感してしまう部分があるのではないでしょうか。反対に男性目線で読むと、世の中の女性とはこんなことを口にされたり経験しているのかと驚くことがあるかも知れません。
自分の感情を言葉にするのはとても難しいですし、それを他者に伝えることは恐ろしくもあり億劫でもあります。そうやって無くしてしまった声を私たちはいくつも抱えているのでしょう。その普遍性に寺地さんは鋭く切り込んでいます。自分の感情や意見を無くした後に口から出てくる言葉とは一体どんなものでしょうか。おそらくそれは『世間的に正しいこと』や『周りのみんながそう思っていること』なのです。人間は周囲に同調するために本心でないことを声にします。周囲と違うことを言う人は、面倒くさい人としてグループから外されてしまう恐怖があるものです。
『アフタースクール鐘』の発起人である要(かなめ)という男性も良い味を出してくれています。堅実な職にも就かず周囲の人からの評判は良くないと語られますが、彼が民間で放課後クラブを作った理由を知ってから、私はこの人物のことが好きになってしまいました。他人から聞く評判と、実際に関わることで分かった人物像がイコールではないのも面白い所です。『アフタースクール鐘』に通う子供たちや要と交流していく内に、希和が周りの声に流されず自分の意見や感情を声に出すように前向きに変わっていく、その様子が「声の在りか」というタイトルにぴったりはまっているように思います。
声に出した言葉というのは不思議なもので、何気なく誰かに言った言葉が巡り巡ってどこかの誰かを救う、なんてこともあるのかもしれません。面倒でも言葉を濁したり飲み込んだりせずに、自分の気持ちに向き合って言葉を重ねていくことの大切さが、寺地さんが「声の在りか」という作品に込めたメッセージなのだろうなと感じました。
金高堂書店本店 スタッフ
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